不動産信託受益権の仲介を行うときに、取引の相手方である顧客について、「顧客カード」というものを作成し、顧客の属性について、事前に判断しなければいけません。
この顧客カードとは、いったい何のために作成する書類なのでしょうか?
そもそも、金融商品取引業者は、顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的(これを「顧客属性」と呼んでいます)を知った上で、その人に相応しくない勧誘をしてはいけません。
これを、「適合性の原則」と言い、金融商品取引法によって、第二種金融商品取引業者は確認することを義務付けられているのです。
もし信託受益権の性質をまったく分かっていない顧客の仲介を行った場合、あとから裁判を起こされて、仲介自体を無効とされてしまうことになります。
つまり、「適合性の原則」から考えて、不適当だったということです。
また、あとから裁判を起こされる可能性を考えると、口頭では証拠になりません。
そこで、不動産信託受益権の仲介を行う不動産会社は、顧客属性を確認できる「顧客カード」を作って整理しているのです。
顧客カードに記載する具体的な事項としては、以下のようなものが挙げられます。
・ 顧客の氏名または名称
・ 顧客の住所または所在地および連絡先
・ 生年月日(顧客が自然人の場合)
・ 職業(顧客が自然人の場合)
・ 投資目的
・ 資産の状況
・ 投資の経験の有無
・ 取引の種類
・ 顧客となった動機
なお、顧客が自分を訴えることはないから、「顧客カード」なんていらないと主張する不動産会社もあります。
ただ、金融庁の検査で、「適合性の原則」を無視していることで顧客の保護に欠けると判断されてしまうと、金融商品取引法違反として、業務改善命令や業務停止などの行政処分を受ける可能性もあります。
インターネットに公表されたり、信託受益権の仲介もできなくなってしまいます。
十分、気をつけましょう。