あなたが、やっと、不動産の売主を探してきて・・・さあ、買主を探すぞと思って、登記簿謄本を見ると、「あれ? 所有者が信託銀行になっている」ということが増えました。
それでも、信託の受益者が売主であることは間違いないし、不動産の売買と同じだと思うけど・・・と考えて、あなたが、その信託銀行に電話をして、
「私が、売主側の仲介会社になる、○○不動産会社です」と言うと、
「信託受益権の売買を仲介するならば、宅建業だけではできないことは知っていると思いますが、確認のため、そちらの金融商品取引業の登録番号を教えてください」
と言われて、
「はぁ?? 金融商品取引業って、宅建業とは違うのか?」
と意味が分からなくなります。
信託受益権は、不動産ではありません。
金融商品取引法上の有価証券です。
不動産の瑕疵担保責任、物件の管理責任は、所有者である信託銀行が負います。
逆に、金融商品の売買の責任は、仲介の会社が負うのです。
つまり、不動産の所有権は動かずに、信託受益権の受益者の権利だけが移転するのです。
そのため、あなたが、信託受益権にビジネスとして関わるためには、宅地建物取引業ではなく、第二種金融商品取引業の登録が必要となります。
あなたが用意すべき書類は、不動産の売買契約書や重要事項説明書ではなく、金融商品取引法で決められている契約書なのです。
10年ぐらい前から、不動産の証券化ビジネスが増えて、都心、地方を問わず、収益性のある物件の多くが、「信託受益権」に変わっています。
証券化ビジネスとは、投資家からお金を集めて、投資して運用する仕組みを作ることが仕事であり、賃貸管理の実務は仕事に含まれていません。そこで、信託銀行に、それを丸投げで行なってもらうのです。
このとき、不動産に瑕疵があったり、法律に抵触しそうな物件は、信託銀行が引き受けません。それが、ほんの些細なことであっても、所有者となる信託銀行が責任を負うので、信託はできません。
物件には何の問題もないとしても、テナントの事業に違法性があったり、テナントともめているという理由でも、信託はできません。
また、信託銀行の手数料は高いので、物件の金額自体が小さい場合でも、信託されていないのです。
価格が大きいので仲介手数料は高くなり、
テナントが身奇麗で争いがないので買い手を見つけやすく、
買い手にはローンがつくので売買が成立しやすい、
つまり、不動産会社としては、仲介したい物件ほど、信託受益権化されているのです。
あなたが、自分で売主、または買主、それとも両方を見つけてきたとしても、
「おたくは、第二種金融商品取引業者じゃないから、相手にできない」
と言われてしまい、急いで、ご相談に来られる宅建業の方が増えています。
信託銀行は、受益者が誰に変わろうと、別に利益とは関係ありません。
だから、誰が仲介したいかなんて、関係ないのです。
ただ、今日、相談に来て、1週間以内に、第二種金融商品取引業に登録できるものではありません。
確かに、信託受益権の売買だけを目的にして、第二種金融商品取引業への登録を申請するのは、要件も厳しくなく、時間もかかりません。
それでも、あなたが必要な資料を揃えてから、最低3ヶ月程度はかかってしまうのです。(資料を揃える時間もいれると、3ヶ月以上かかることになります)
ということは、すでに売買の仲介をしたい信託受益権を見つけてから、登録の書類を作り始めても、その取引には間に合わないということです。
このようなチャンスを逃さないために、宅建業の方は、自分には関係ないと思わず、事前に第二種金融商品取引業の登録をしておくべきです。
なお、相談に来られる方が、よく誤解していることがあります。
相談内容1
不動産の売主の仲介に、第二種金融商品取引業者がいるので、買主の仲介は、宅建業だけでよいのでは?
回答
売主とは関係なく、信託受益権の買主の仲介だけを行なう場合でも、必ず、第二種金融商品取引業の登録が必要となります。
もともと、平成17年9月までは、「信託受益権販売業」という登録があり、「売主」側にのみ「業」の登録が必要でした。
そのため、勘違いしているのかもしれませんが、金融商品取引法が施行されたことで、「売買」に関わる全ての会社に、第二種金融商品取引業の登録が必要になっています。
相談内容2
第二種金融商品取引業に登録するときには、1000万円の供託金が必要でしょうか?
回答
1000万円の供託金は、必要ありません。
これも、「信託受益権販売業」のときには、供託金が必要でしたが、今は会社の資本金が1000万円以上あれば、供託金は不要です。
なお、1000万円の資本金は、使えないわけではありません。
会社の運営費として、社員の給料、賃料や保証金、広告宣伝費など、何にでも自由に使うことができます。
相談内容3
信託受益権の仲介手数料を受け取らなければ、第二種金融商品取引業の登録は必要ないですか?
回答
金融庁は、信託受益権の仲介手数料が無料であっても、第二種金融商品取引業への登録が必要だと、ハッキリと文書で回答しています。
もし、第二種金融商品取引業に登録せずに、信託受益権の仲介を行なってしまうと、無登録営業として、金融商品取引法違反になってしまいます。
この場合、3年以下の懲役、または300万円以下の罰金と、想像以上に重い刑になるので、止めましょう。
相談内容4
第二種金融商品取引業が1社でもいれば、共同で仲介することはできますか?
回答
無料でもできないのに、当然、有料の手数料を取ることはできません。
不動産の信託受益権にビジネスとして関わるためには、第二種金融商品取引業に登録するしかありません。
つまり、登録していなければ、1円の手数料ももらえないということです。
ただ、手数料を支払った第二種金融商品取引業者には、最悪、業務停止もあり得るため、もともと、それを引き受ける会社を見つけられないはずです。
相談内容5
第二種金融商品取引業に登録すれば、投資家を募って、不動産ファンドを作ることもできますか?
回答
不動産ファンドを作ることは、できません。
信託受益権の売買を仲介する第二種金融商品取引業と、ファンドを作ることができる第二種金融商品取引業では、登録する時の要件が違います。
同じ名称でも、ファンドを作るための第二種金融商品取引業への登録は、すごく難関です。
あとで、ファンドも作りたいと思い立った場合には、再度、財務局に業務の変更の書類を提出する必要があります。
これが受理されるためには、厳しい要件をクリアしなければいけません。
なお、もともと、不動産ファンドを作るためには、金融商品取引法、不動産特定共同事業法、資産流動化法などにも、精通していなければ難しいでしょう。
今後は、不動産会社が信託受益権の仲介を行なわずに、儲かることは難しい時代になると考えられます。
結果的に、登録しなければいけないのであれば、早く行動を起こした方がよいはずです。
もしかしたら、明日、信託受益権を仲介して欲しいと、依頼されるかもしれません。